僕の耳には君の声しか聞こえない。 pl.metrostav.cz: 夏ノ日、君ノ声: 葉山奨之, 荒川ちか, 古畑星夏, 大口兼悟: generic

何も聞こえないの歌詞|3markets(株)

僕の耳には君の声しか聞こえない

僕は君の顔を知らない。 君は僕の声を知らない。 きっと君は光を浴びているんじゃなくて、 光そのものだから。 ほんとに光を失ってしまうということは、 君が消えてしまうということだ。 だから、僕に光を与えて続けて。 木造の病院。 ストーブの湯気に木の匂いが混ざる。 床を踏んづければギィーっときしむ。 風が吹けば窓ガラスを叩く。 君が泪を流したのなら、 僕にサインを送って。 それを君は義務だと思って。 それを僕は権利だと思ってる。 きっと、心に届いて、僕を濡らして。 ベッドの上で君は、 病室のガラス窓に眼をやり、 外にある景色をいつも眺めている。 ずっと、眺めている。 彼女の世界はそこがすべて。 僕は君の顔を知らない。 それはなによりも見たい景色なのに。 君は僕の声を知らない。 それは誰よりも響いてほしい声なのに。 角砂糖は渦を巻く紅茶に溶けた。 ざらざらしているそれは甘さに変わる。 雪の色も、桃の色も、それは遠い昔の記憶。 真新しい朝。 僕はといえばテーブルを叩くようにして転がるペンを探し、感触に紙の隅っこを確かめて、手探りで文字を書く。 きっと、大きかったり、小さかったり、歪んでいたり、重なっていたりする文字を並べて。 君に宛てた手紙を。 配達人は看護師。 とはいっても隣の病室。 今頃、読んでいるところだろうか。 君はどんな顔して眺めているか。 その歪んだ文字に笑っているの? その文章で笑顔を作れるの? 林檎は赤い。 だけど、赤いだけじゃない。 かじってしまえば、歯型の黄色、白。 上から覗けば、緑でもある。 決まって返事は夕方になって。 時計を見ることのない僕は、届く手紙に過ぎて行った時間を知る。 看護師に手渡された手紙。 捲る指先が心を追い越す。 その文字を目で追うのではなく、指でなぞる。 そうやって文字を読む。 点字の手紙を。 僕は目が見えない。 視力を失った。 君は耳が聞こえない。 聴力を失った。 未完成な僕等の、完成しない恋だった。 ここは田舎町の高台にある精神科の病院。 あれは、16の頃だった。 焦げる匂いに気づき眼を覚ましたのは深夜。 静まり返った二階建ての家。 僕は自分の部屋を出て、冷たい階段を降りた。 台所では知らない誰かが薄らと笑顔を浮かべていた。 ゴミに火をつけ、燃えるのを眺めながら。 その知らない誰かと目が合って、僕は動けなくなった。 動揺する心を抑えきれぬまま、残りの階段を駆け下りる。 そうこうしている間に、燃え広がる炎。 あっという間だった。 見る見るうちに家を包んでいく。 大声で叫んだ。 僕は両親が居るであろう寝室へ向かおうとした。 そんな僕の腕を知らない誰かが掴んだ。 掴まれた腕をはらい、誰かを押し倒した。 しかし、走り出そうとする足を両手で握られ、僕も倒れ込んだ。 意識がもうろうとなる中で知らない誰かは言った。 「人が苦しんでいる顔を見るのが大好きなの」 僕の身体に、知らない誰かの身体に、炎が襲い掛かるのが分かった。 火傷を分け合い、眼を閉じてしまった。 目が覚めた時には病院のベッドに居た。 そこで両親が命を失ったことを告げられた。 そして、目を覚ましたのに、目の前に光はなかった。 その日、僕は失明していた。 失明の原因はあの事件で味わった恐怖体験。 ショックから来る精神的なものだと医者に言われた。 僕は未だに心を治療中である。 知らない誰かの顔は思い出せないが、 その浮かべた笑顔の恐ろしさや、 身体を掴まれた時の感触。 炎の強烈な熱。 煙の匂い。 あの日の恐怖は鮮明に蘇る。 この火傷の跡も消えてはくれない。 そして君も僕と同じような境遇という。 耳が聞こえなくなったのは、精神的ショックが原因だ。 君になにがあったのか? それを僕は知らない。 屋上のフェンス越し。 生温い風に、君の髪は絡まる。 ふたりして黙り込む。 肩を並べて。 僕は君と居る時に言葉を零したりしない。 聞こえないなら哀しくなるだけ。 僕は君の方へ顔を向けない。 見えないのなら苦しいだけ。 でもこうして手を握りしめている。 たしかな温もりにすがる。 でこぼこした点字をなぞって読み取るように、君の手に触れるこの指先で、心の声を読み取れたなら。 君と話がしたくて覚えた点字のように。 心をなぞれたなら、どんな感触で、どんな温度だろうか? ずっと君とふたりきりで居られたならと、ありもしない妄想に耽る午後。 君からの手紙を看護師から手渡された。 温かい飲み物と共に読み始める。 ちょっと前に看護師さんから聞きました。 治療を受けに外国の病院へ行くことを先生から勧められていると。 それなのにあなた断り続けていることも。 私はとっても素晴らしいことだと思います。 だってあなたに光が返ってくるかもしれないのです。 目が見えるようになったらあなたの世界は輝くことでしょう。 何故外国に行くことを拒むのですか? 私のことを気にしているのですか? 私が独りぼっちになり、哀しむだろうと。 私が寂しがるのではと、心配ですか? 私を置き去りに、あなただけが光を手に入れることが気がかりですか? 外国には素晴らしい環境と、腕の良い精神科の医者が居るそうです。 私なら大丈夫。 あなたには幸せになってほしい。 手紙にはそう書いてあった。 僕は名前も知らない感情が込み上げて、胸の中でじたばたしていることに気づいた。 そんな感情のまま、ペンを走らせていた。 君は光を手に入れることが出来ると言いますが、それは違います。 君こそが光そのものなのだから。 君とじゃなきゃ意味がないんだ。 君とじゃなきゃ、僕じゃないから。 ふたりで手に入れたい。 じゃないと幸せと呼べそうにないから。 君のことをいつも見ている。 君のことをいつも見てきた。 きっと、見えている。 ただ、いっしょに居たいと願って。 僕は君にきっと最後になるであろう手紙を書いた。 下手くそな文字で。 真実のように真剣に、 本当のような嘘で、 嘘の手紙を書いた。 窓の外では、一本の木から薄い桃色の花弁が舞う。 絶え間なく、絶え間なく。 雪のように降り積もり、地面を染めていく。 雨上がりの春。 きっと、君はそんな景色を見ている。 そこへ看護師が僕の病室へ入ってきた。 いつもと様子が違う。 きっと深妙な面持ちだ。 「実は、あなたに伝えないといけないことがあるの」 「なんだか嫌な予感がするんだ。 そんなかしこまった言い方されると。 聞きたくないよ」 扉から僕のベッドへ近づいてくる看護師の足音が聞こえる。 「驚かずに聞いて。 明日、外国の病院に移ることが決まったの。 急な話でごめんね」 「何を言っているんだ。 その話なら散々断ってきたはずだ。 呆れるくらいに」 「だけど、決まってしまったんだ。 あなたには心の準備をさせてあげれる時間を作れなくて悪いと思ってる」 「だから、同意書には僕のサインが必要なはずだ。 僕の意向を無視して決めれるものじゃないだろ」 「それが、決めれるの」 「えっ?」 「あなたにとって唯一のご親戚である叔母さんから、同意を得ている。 まだ未成年のあなただから」 「冗談だろ? そんな馬鹿なことがあってたまるか。 僕の気持ちを無視して」 僕の声は大きくなる。 「それもこれも全てはあなたの為なの。 あなたの目の為に……。 」 「認めない。 絶対に」 「あなたには未来があるから」 「未来はここにある」 「お願い、最先端の治療を受けて」 「断る。 出て行ってくれ」 「もう決まったことなの。 この病室だって新しい患者さんが入ることが決まってる」 「えっ?」 「同意書にある保護者のサインに基づいて、力ずくにでもこの病院はあなたを海外に連れていく」 「そんな。 そんなこと、許さない」 「きっと良かったって思える。 海外に移って良かったって。 そんな日がきっと来る。 光を取り戻して」 「……。 」 やるせない気持ちで、一晩中真っ暗な天井を見上げた。 君を浮かべて、眠れない夜を過ごして。 まだ昨夜の冷たさが残る薄暗い朝。 看護師は僕の病室にやって来た。 旅立ちを急かすように。 「準備は出来た? 最後に会いたい人が居るんじゃないの? 手紙があるなら預かる」 「その必要はなさそうだ」 「今後に及んでまだそんなことを。 覚悟を決めて」 「見えるんだ」 僕は看護師の顔を真っ直ぐに見つめた。 「冗談、でしょ?」 「精神的ショックが原因の失明だったよな。 強い意志が奇跡を起こした」 「これは、何本?」 看護師が顔の近くで指を立てる。 「二本」 「ほんとに見えてるのね」 「あぁ」 看護師は何故か申し訳なさそうな顔をしている。 「ごめんなさい……。 」 「どうして謝る?」 「あなたに謝らないといけないことがある」 「うん?」 「あなたにずっと嘘をつき続けてきた」 「嘘?」 「耳の聞こえなくなった女の子なんていない。 存在しないの」 「……。 」 「全て私が作り上げた架空の人物。 点字の手紙だって私が作っていた。 架空の女の子に扮して私が隣にいた。 それも治療の為よ。 歳も近い同じ境遇の子が近くにいたらきっと壊れた心が育まれる」 「知ってたよ」 「えっ?」 「看護師さんが演技してたこと、知ってた」 「冗談でしょ? なんで知ることが出来るの? あり得ない」 「だって、ずっと前から目が見えてた」 「えっ?」 「僕は僕で演技してたんだ。 長い間」 「そ、そんなこと……。 」 「だから隣の病室にはあの子が居ないことも、あの子の変わりに看護師さんが隣に居たことも全て見えていた。 架空の女の子を作り上げたのも、カウンセリングの一環だと気づいていた」 「なんで、そんな途方もない嘘を?」 「あの事件があった直後は本当に見えなかったんだ。 だけど次第に視力は回復した」 「回復しても尚、目の見えない演技を? どうしてなの?」 「好きなんだ。 君のこと」 「えっ?」 「演技をしてる君じゃなくて、看護師さんが好きだ」 「それで?」 「見えてるだなんて言ったら退院しなくちゃいけなくなるだろ? そうなれば君に会えなくなる」 「馬鹿じゃないの?」 「あぁ、馬鹿かもしれない。 でも、手紙に書いたろ? 君は光だったって。 僕にとって、嘘の君じゃなく、本当の君がそうなんだ」 「私達、嘘だらけの関係なのに?」 「それでも好きだ。 手紙は最後にしよう、嘘も最後にしよう」 「うん……。 ありがと」 「これからは、顔を合わせて、耳を傾けて」 私、人が苦しんでいる顔を見るのが大好きなの。 だから看護師になった。 そんなことを思いながら、背中の火傷に手を当てた。

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11話:声

僕の耳には君の声しか聞こえない

僕は君の顔を知らない。 君は僕の声を知らない。 きっと君は光を浴びているんじゃなくて、 光そのものだから。 ほんとに光を失ってしまうということは、 君が消えてしまうということだ。 だから、僕に光を与えて続けて。 木造の病院。 ストーブの湯気に木の匂いが混ざる。 床を踏んづければギィーっときしむ。 風が吹けば窓ガラスを叩く。 君が泪を流したのなら、 僕にサインを送って。 それを君は義務だと思って。 それを僕は権利だと思ってる。 きっと、心に届いて、僕を濡らして。 ベッドの上で君は、 病室のガラス窓に眼をやり、 外にある景色をいつも眺めている。 ずっと、眺めている。 彼女の世界はそこがすべて。 僕は君の顔を知らない。 それはなによりも見たい景色なのに。 君は僕の声を知らない。 それは誰よりも響いてほしい声なのに。 角砂糖は渦を巻く紅茶に溶けた。 ざらざらしているそれは甘さに変わる。 雪の色も、桃の色も、それは遠い昔の記憶。 真新しい朝。 僕はといえばテーブルを叩くようにして転がるペンを探し、感触に紙の隅っこを確かめて、手探りで文字を書く。 きっと、大きかったり、小さかったり、歪んでいたり、重なっていたりする文字を並べて。 君に宛てた手紙を。 配達人は看護師。 とはいっても隣の病室。 今頃、読んでいるところだろうか。 君はどんな顔して眺めているか。 その歪んだ文字に笑っているの? その文章で笑顔を作れるの? 林檎は赤い。 だけど、赤いだけじゃない。 かじってしまえば、歯型の黄色、白。 上から覗けば、緑でもある。 決まって返事は夕方になって。 時計を見ることのない僕は、届く手紙に過ぎて行った時間を知る。 看護師に手渡された手紙。 捲る指先が心を追い越す。 その文字を目で追うのではなく、指でなぞる。 そうやって文字を読む。 点字の手紙を。 僕は目が見えない。 視力を失った。 君は耳が聞こえない。 聴力を失った。 未完成な僕等の、完成しない恋だった。 ここは田舎町の高台にある精神科の病院。 あれは、16の頃だった。 焦げる匂いに気づき眼を覚ましたのは深夜。 静まり返った二階建ての家。 僕は自分の部屋を出て、冷たい階段を降りた。 台所では知らない誰かが薄らと笑顔を浮かべていた。 ゴミに火をつけ、燃えるのを眺めながら。 その知らない誰かと目が合って、僕は動けなくなった。 動揺する心を抑えきれぬまま、残りの階段を駆け下りる。 そうこうしている間に、燃え広がる炎。 あっという間だった。 見る見るうちに家を包んでいく。 大声で叫んだ。 僕は両親が居るであろう寝室へ向かおうとした。 そんな僕の腕を知らない誰かが掴んだ。 掴まれた腕をはらい、誰かを押し倒した。 しかし、走り出そうとする足を両手で握られ、僕も倒れ込んだ。 意識がもうろうとなる中で知らない誰かは言った。 「人が苦しんでいる顔を見るのが大好きなの」 僕の身体に、知らない誰かの身体に、炎が襲い掛かるのが分かった。 火傷を分け合い、眼を閉じてしまった。 目が覚めた時には病院のベッドに居た。 そこで両親が命を失ったことを告げられた。 そして、目を覚ましたのに、目の前に光はなかった。 その日、僕は失明していた。 失明の原因はあの事件で味わった恐怖体験。 ショックから来る精神的なものだと医者に言われた。 僕は未だに心を治療中である。 知らない誰かの顔は思い出せないが、 その浮かべた笑顔の恐ろしさや、 身体を掴まれた時の感触。 炎の強烈な熱。 煙の匂い。 あの日の恐怖は鮮明に蘇る。 この火傷の跡も消えてはくれない。 そして君も僕と同じような境遇という。 耳が聞こえなくなったのは、精神的ショックが原因だ。 君になにがあったのか? それを僕は知らない。 屋上のフェンス越し。 生温い風に、君の髪は絡まる。 ふたりして黙り込む。 肩を並べて。 僕は君と居る時に言葉を零したりしない。 聞こえないなら哀しくなるだけ。 僕は君の方へ顔を向けない。 見えないのなら苦しいだけ。 でもこうして手を握りしめている。 たしかな温もりにすがる。 でこぼこした点字をなぞって読み取るように、君の手に触れるこの指先で、心の声を読み取れたなら。 君と話がしたくて覚えた点字のように。 心をなぞれたなら、どんな感触で、どんな温度だろうか? ずっと君とふたりきりで居られたならと、ありもしない妄想に耽る午後。 君からの手紙を看護師から手渡された。 温かい飲み物と共に読み始める。 ちょっと前に看護師さんから聞きました。 治療を受けに外国の病院へ行くことを先生から勧められていると。 それなのにあなた断り続けていることも。 私はとっても素晴らしいことだと思います。 だってあなたに光が返ってくるかもしれないのです。 目が見えるようになったらあなたの世界は輝くことでしょう。 何故外国に行くことを拒むのですか? 私のことを気にしているのですか? 私が独りぼっちになり、哀しむだろうと。 私が寂しがるのではと、心配ですか? 私を置き去りに、あなただけが光を手に入れることが気がかりですか? 外国には素晴らしい環境と、腕の良い精神科の医者が居るそうです。 私なら大丈夫。 あなたには幸せになってほしい。 手紙にはそう書いてあった。 僕は名前も知らない感情が込み上げて、胸の中でじたばたしていることに気づいた。 そんな感情のまま、ペンを走らせていた。 君は光を手に入れることが出来ると言いますが、それは違います。 君こそが光そのものなのだから。 君とじゃなきゃ意味がないんだ。 君とじゃなきゃ、僕じゃないから。 ふたりで手に入れたい。 じゃないと幸せと呼べそうにないから。 君のことをいつも見ている。 君のことをいつも見てきた。 きっと、見えている。 ただ、いっしょに居たいと願って。 僕は君にきっと最後になるであろう手紙を書いた。 下手くそな文字で。 真実のように真剣に、 本当のような嘘で、 嘘の手紙を書いた。 窓の外では、一本の木から薄い桃色の花弁が舞う。 絶え間なく、絶え間なく。 雪のように降り積もり、地面を染めていく。 雨上がりの春。 きっと、君はそんな景色を見ている。 そこへ看護師が僕の病室へ入ってきた。 いつもと様子が違う。 きっと深妙な面持ちだ。 「実は、あなたに伝えないといけないことがあるの」 「なんだか嫌な予感がするんだ。 そんなかしこまった言い方されると。 聞きたくないよ」 扉から僕のベッドへ近づいてくる看護師の足音が聞こえる。 「驚かずに聞いて。 明日、外国の病院に移ることが決まったの。 急な話でごめんね」 「何を言っているんだ。 その話なら散々断ってきたはずだ。 呆れるくらいに」 「だけど、決まってしまったんだ。 あなたには心の準備をさせてあげれる時間を作れなくて悪いと思ってる」 「だから、同意書には僕のサインが必要なはずだ。 僕の意向を無視して決めれるものじゃないだろ」 「それが、決めれるの」 「えっ?」 「あなたにとって唯一のご親戚である叔母さんから、同意を得ている。 まだ未成年のあなただから」 「冗談だろ? そんな馬鹿なことがあってたまるか。 僕の気持ちを無視して」 僕の声は大きくなる。 「それもこれも全てはあなたの為なの。 あなたの目の為に……。 」 「認めない。 絶対に」 「あなたには未来があるから」 「未来はここにある」 「お願い、最先端の治療を受けて」 「断る。 出て行ってくれ」 「もう決まったことなの。 この病室だって新しい患者さんが入ることが決まってる」 「えっ?」 「同意書にある保護者のサインに基づいて、力ずくにでもこの病院はあなたを海外に連れていく」 「そんな。 そんなこと、許さない」 「きっと良かったって思える。 海外に移って良かったって。 そんな日がきっと来る。 光を取り戻して」 「……。 」 やるせない気持ちで、一晩中真っ暗な天井を見上げた。 君を浮かべて、眠れない夜を過ごして。 まだ昨夜の冷たさが残る薄暗い朝。 看護師は僕の病室にやって来た。 旅立ちを急かすように。 「準備は出来た? 最後に会いたい人が居るんじゃないの? 手紙があるなら預かる」 「その必要はなさそうだ」 「今後に及んでまだそんなことを。 覚悟を決めて」 「見えるんだ」 僕は看護師の顔を真っ直ぐに見つめた。 「冗談、でしょ?」 「精神的ショックが原因の失明だったよな。 強い意志が奇跡を起こした」 「これは、何本?」 看護師が顔の近くで指を立てる。 「二本」 「ほんとに見えてるのね」 「あぁ」 看護師は何故か申し訳なさそうな顔をしている。 「ごめんなさい……。 」 「どうして謝る?」 「あなたに謝らないといけないことがある」 「うん?」 「あなたにずっと嘘をつき続けてきた」 「嘘?」 「耳の聞こえなくなった女の子なんていない。 存在しないの」 「……。 」 「全て私が作り上げた架空の人物。 点字の手紙だって私が作っていた。 架空の女の子に扮して私が隣にいた。 それも治療の為よ。 歳も近い同じ境遇の子が近くにいたらきっと壊れた心が育まれる」 「知ってたよ」 「えっ?」 「看護師さんが演技してたこと、知ってた」 「冗談でしょ? なんで知ることが出来るの? あり得ない」 「だって、ずっと前から目が見えてた」 「えっ?」 「僕は僕で演技してたんだ。 長い間」 「そ、そんなこと……。 」 「だから隣の病室にはあの子が居ないことも、あの子の変わりに看護師さんが隣に居たことも全て見えていた。 架空の女の子を作り上げたのも、カウンセリングの一環だと気づいていた」 「なんで、そんな途方もない嘘を?」 「あの事件があった直後は本当に見えなかったんだ。 だけど次第に視力は回復した」 「回復しても尚、目の見えない演技を? どうしてなの?」 「好きなんだ。 君のこと」 「えっ?」 「演技をしてる君じゃなくて、看護師さんが好きだ」 「それで?」 「見えてるだなんて言ったら退院しなくちゃいけなくなるだろ? そうなれば君に会えなくなる」 「馬鹿じゃないの?」 「あぁ、馬鹿かもしれない。 でも、手紙に書いたろ? 君は光だったって。 僕にとって、嘘の君じゃなく、本当の君がそうなんだ」 「私達、嘘だらけの関係なのに?」 「それでも好きだ。 手紙は最後にしよう、嘘も最後にしよう」 「うん……。 ありがと」 「これからは、顔を合わせて、耳を傾けて」 私、人が苦しんでいる顔を見るのが大好きなの。 だから看護師になった。 そんなことを思いながら、背中の火傷に手を当てた。

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僕はもう、僕の魂で君を呼ぶことしかできない。|aizu|note

僕の耳には君の声しか聞こえない

高校2年生の哲夫はケンカで傷を負い市内の病院に入院している。 暇を持て余す哲夫だったが、偶然同じ病院に入院している舞子に出会う。 舞子は生まれながらの難病を患っており、その影響で声を出すことができず耳も聞こえない。 最初は戸惑っていた哲夫だが、舞子の持っていた音声補助装置やメモ帳を使い、文字を交わすことで心を通わせていく。 お互いに淡い恋心を抱き始めた哲夫と舞子。 退院後も毎日会いに来ると約束した哲夫は、その言葉通り舞子の入院している病院に退院後も通うようになる。 そんな中、誕生日に外出を許された舞子は哲夫に行きたい場所があることを告げる。 舞子を喜ばせようと息巻く哲夫だが、徐々に舞子に病魔の影が迫っており…。 C 「夏ノ日、君ノ声」製作委員会 同棲を始めてもう五年、結婚を切り出した恋人に対して、それに踏み切れない戸上哲夫・・・ このシーンがヤケに重くまるで離婚直前の夫婦のような会話です。 実家に帰る二人・・・ シーンは高校時代に戻ります。 運命的な高代舞子との出会いと恋、荒川ちかと葉山奨之の二人、荒川ちかの素朴な可愛さ、 葉山奨之の青春にありがちな事件に対しての演技が自然なので違和感無く引き込まれます。 内容は良くある恋人が不治の病で亡くなると言う物語ですが、 監督やシナリオの良さもあって自然にストーりに引き込まれました。 ハッと気がついたのが恋人灯台でのエンディングがはじまってからです。 冒頭シーンの実家へ帰る恋人は高校時代に戸上哲夫に思いを寄せていた『森野ユカ』なんですよね! ここでもう一つのストーりが流れていたのだとわかりました。 高校時代にまったく聞こえない、話せないという障害と残り少ない命の舞子に、 哲夫とは住む世界が違うんだと迫ってしまう、ユカ。 その後大人になってから哲夫と恋仲になるユカ、 しかし高校時代舞子に与えた仕打ちへの後悔はずっと引っかかっていたと思います。 一方、舞子にすべてを捧げていた哲夫だが、最後の約束をはからずも守れず舞子の最期に会えなかった・・・ そのことを悔やみ続ける哲夫・・・その舞子に対する想いを引きずり、ユカとの結婚に踏み切れない哲夫だったのです。 あの舞子との最後では誰しも引きずってしまうと思います。 五年もの同棲生活にピりオードを打つ決心なのか、実家に帰るユカ、 哲夫も実家へ行くが、母親からはユカと別れたんじゃ無いだろうねと念押しされる哲夫。 そこへふたたび舞子が現れます。 恋人岬の夜明けから朝へと向かう時間帯のこのシーンは、意味が理解できてから何回も見返しました。 いつまでの自分への想いを引きずっている哲夫に、ユカのとこへ行きなさいと背中を押したのが舞子だったのです。 舞子もユカも哲夫といっしょに行きたかったこの場所で奇跡が起こります。 舞子とユカがオーバーラップしてしまうシーンはちょっと鳥肌です。 そして手のひらに残る『はなまる』今度は消えないでちゃんと残っているんです。 今大事にしなくちゃいけないのは『ユカ』だと哲夫が心から思った瞬間でもあります。 頬をひっぱかれる哲夫、それでユカの愛に気づく哲夫、このシーンは好きだな~ 舞子と哲夫と自分自身の関係で言うに言えなく辛かったユカの女心を表した『ひっぱたき』だったのかもですね。 舞子はユカと哲夫の背中をいっしょに押してあげたのです。 舞子が亡くなった時に舞子から手のひらに書かれた『はなまる』は消えてしまいました。 でも、最後の恋人灯台のシーンではしっかり哲夫の手のひらに残っているんです ・・・まさにハッピーエンドです。 新たな恋人ユカとの人生を決めた哲夫・・・爽やか~(笑) 映画の冒頭田舎に帰った哲夫の脇を自転車ふたり乗りで駆け抜けていく高校生カップル、 哲夫と舞子の自転車ふたり乗り、 最後に哲夫とユカのふたり乗り、 このあたりの過去現在未来の表し方も好きです。 見て良かったと思える映画でした、まだ何回か繰り返し見ることと思います。 主人公の高代舞子役の荒川ちかさんが可愛いですね。 演技も自然で良かったと思います。 内容は、主人公の戸上哲夫(葉山奨之さん)が14年前の高校時代に入院先の病院で出逢った難病を抱えた少女との純愛の回顧話です。 悲しくも切ない物語でした。 (涙、涙・・・) 哲夫て?不良なんですかね?(余り不良感を感じませんでした)。 喧嘩シーンは多かったが・・・不良感を出したかったのかなぁ? ストーリーは・・・ (略) 舞子の母親からようやく舞子に会う許可をもらった哲夫だったが、会いに行く途中でケンカに巻き込まれて病院にたどり着いた時には意識を喪失してそのまま入院してしまう。 翌朝、目覚めた哲夫を見舞ったのは舞子だったが病室から出て行った彼女を追うと舞子の病室の前で彼女の母親(菊池麻衣子さん)が泣いていた。 実は舞子はすでに亡くなっていたという設定(亡くなり方が「世界の中心で、愛をさけぶ」と同じ)でした。 うーん!? 舞子の死が余りに急というか突然に訪れて呆気に取られました。 ストーリーの展開としては、この方が良かったのかも知れませんが、2人が会えなかったというのは個人的にはスッキリ出来ませんでした。 それから14年が経ち,森野ユカ(松本若菜さん)と婚約した哲夫(大口兼悟さん)は,昔の荷物の中から舞子が使っていた声の出るキーボードを見つけ,あの灯台に行ってみる。 そして、記憶の中(?)で舞子に再会するというストーリーです。 (略) ・・・ ・・・ ・・・ ・・・。 *森野ユカは、高校時代に哲夫を慕っていた女子です。 ストーリーが脳裏に残り暫く頭から離れませんでした。 現在と過去の二重軸の中で伝えたかったこととは・・・? 葉山奨之が好きで観てみたけど…… ヒロインがあまり可愛くないうえに、展開が色々と急すぎて観終わったあとに疑問しか残らない…… どうしてあんなに仲の悪かった2人が5年も付きあってるのか、いつどこでどんな風にそうなったのかが1つも無くて、正直どゆこと?です。 他の方のレビューにもあるので、私の理解力がないわけじゃないはず。 映画サークルのしょーもない映画って印象です。 最期にヒロインに会いに行くはずだった日、朝アクセサリーを全部外していて、喧嘩に巻き込まれているときもアクセサリーは外れているのに 病院の駐車場に着いた時はピアスもネックレスもブレスレットもついているという雑さ…… なんか、ガッカリです…….

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